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HR Column

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中途採用面接で採用担当が持つべき視点

採用

2019.06.27

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今回は「中途採用」についてお伝えします。

以前、HR Columnの別のコラムでは”変わる新卒採用”と題して「インターンシップ」についての理解を深めました。新卒採用との違いも踏まえつつ中途採用について見ていきましょう。

日本独特の慣習である新卒一括採用

かつて経済成長と企業の規模拡大が前提であった時代においては、まとまった数の働き手を一度に確保する有効な採用手法として、いわゆる新卒(一括)採用という日本独特の慣習的な採用の形態が主流でした。

新卒一括採用のメリットは、社員の育成の効率化、同期内での競争原理を働かせることによる相対評価のしやすさなどです。高度経済成長期にはこのシステムが時代にあっていたと言えます。


しかし、経営環境の変化や人材の流動化が加速化している現在、「全員に一括で均質な社員教育を施す」「時間をかけて一人前に育てる」といった、かつてのような余裕をもつことは、許されなくなりました。均質な人材を大量育成すると、人材の多様性が欠けるので変化への対応力が失われる結果になります。

新卒採用では『可能性』を評価

新卒採用においては、社会人経験がない学生が対象になるので「即戦力」であることは求められません。学生に求められるのは「可能性」です。在学時代に取り組んだ活動(アルバイトやボランティアなど)で自主性を発揮した場面について問われ、これから勤める企業で貢献できる人材として成長していくかどうかの可能性を判断されます。

いわゆる「ポテンシャル採用」「ポテンシャル枠」という言葉はここに由来します。新卒に限りませんが、未経験者を採用する場合には、人事担当者はこの「可能性」を見抜く力が求められます。早期に戦力化し、業績に貢献できる成果を生む人材を、どれだけ多く確実に採用できるかは、組織の競争力を決定する重要な要因のひとつになりつつあります。

中途採用では『即戦力』が求められる

昨今、転職が珍しくはなくなり、日本においても人材の流動性が高まってきました。新卒採用をやめることを公言している企業があることも話題になっています。

そんな中、今後ますます増えるであろう中途採用について、人事担当者として意識すべきことを求職者側の視点も整理しながら考えていきたいと思います。
中途採用(特にキャリア採用)においては、求職者の前職の経験と実績をもとに「即戦力」として活躍できるかを判断することが重要です。そのためには、まず企業の人事担当者は、「どのようなスキルを、どの程度のレベルで、求めているのか」を極力客観的に求職者に示せるよう事前準備しておくことが望ましいでしょう。異業種からの転職希望者にも当てはめられるような基準も持っておきたい視点です。

中途採用面接のコツ

そして面接時には、「求職者の過去の行動事実を掘り下げること」は特に大切です。その行動事実の中から、その人の行動の考え方やクセ、特性というべきものを突き止め、それが、将来にわたって安定的に成果を生むものであるかどうかを評価します。
行動事実とは、いつ、どこで、誰と、何を、どのようにし、その結果どうなったか、ということです。またその中で苦労した点、難しかった点なども具体的なエピソードベースで細かく尋ねます。そのため、実際にやっていないことを答えるのは難しく、求職者のスキルやレベルを見極めるために有効です。


また、「成果の再現性」も重要な確認ポイントです。再現性のない成果の例とは、

・前任者の仕込みが実ったことで生まれた成果
・たまたまた市場のパイが広がった時期だったときに生まれた成果
・たまたま有力者の援助があり生まれた成果
・天候などの自然条件が味方したため生まれた成果

人事担当者がよくやりがちな、「志望動機」のような抽象的な質問は、相手を納得させるような立派な答えを用意するのも容易であり、求職者が本心からそう思っているかどうかは確かめようがないため、貴重な面接時間を費やすことは、あまりお勧めしません。

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求職者側の視点からも多面的に

応募する側である転職希望者の動機についても見ていきます。

転職を希望する動機には様々あります。
例えば、「取得した資格を生かして異業種に挑戦したい」、「家族の事情(介護や出産)でUターンするために職場を変えたい」、「上司からのハラスメントで離職者が多く負荷が増す一方なので環境を変えたい」、「経営不振で給与が右肩下がりになっているので生活のために」などなど理由は様々です。
何れにしても、重要なのはこれらの理由に至る求職者の価値観です。


人事担当者が採用面接にて、過去の行動事実を掘り下げて聞き取っていくと、そこには求職者が生活の上で大事にしたいものや、仕事に何を求めるのかという価値基準が見えてきます。求職者には仕事における即戦力としての活躍が期待されるため、人事担当者は当然「何ができるのか?」という視点で面接を行うわけですが、それ以前に求職者自身の「何のために働くのか?」が明確になっているのかを確認する必要があります。なぜならば、働く理由が明確になければ一時的には目の前の仕事に取り組めても、それが長くは続かないからです。

・オンラインであっても、身だしなみ・相手からの見られ方に気を使えるか
・正確なコミュニケーションを取ろうとしているか
・人間性・仕事の価値観・志望度合いなどを測る質問内容を重視する

といったポイントです。

限られた視覚情報の中にも、応募者の人間性や、人としての振る舞い方は見えてきます。マイクを通すと、意図せず聞き取りづらくなってしまう場面もありますが、その状況の中でも、正確なコミュニケーションを心掛けているかという点も、重要な判断材料です。

また、対面だからこそ伝わる、応募者の熱意や会社の雰囲気に合っているかの判断については、質問内容で測る必要があります。例えば、「仕事において重要だと思うこと」「入社後に実現したいと思うこと」「同業の会社もある中で、なぜ当社なのか」などです。
応募書類の内容だけではなく、仕事に対する考え方や、自社に対する理解・熱意を質問によって掘り下げていくことで、オンラインであっても正確に判断できるようになるでしょう。

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マインドセットができていない場合の処方箋

求職者が仕事に対する価値観を自分では言語化できないようであれば、キャリアコンサルタントなど職業相談のプロの面談を受けることをお勧めします。
そのような『自身を客観的に見る必要』があるのは、「何のために働くのか?」の解決策が、必ずしも「転職」であるとは限らないからです。その上で、いざ面接に挑む際にはスキル・売りになる強みを明確にし、自分が主体で今後どうしていきたいかというマインドセットを整えておく必要があります。

具体的なアドバイスとして、仕事に関わる家庭の事情などは人事の採用担当者からは聞きにくいこともあるため、公表できる範囲で求職者側からできるかぎり開示することをお勧めします。そうすることによって会社としてどの程度働き方を考慮してもらえるのかどうかを確かめることもできるのでミスマッチを防ぐことにもつながります。

中途採用を企業成長戦略に

求職者にとって転職はあくまでも現状を変えるための手段であるということです。そして、人事担当にとっては中途採用は社内に即戦力を得る手段であるということです。親の介護や子育てをしながらの勤務など、様々な制約の中での働き手が増えるこれからの社会では、より一層、「人」と「企業」両方の成長のために中途採用を活用していくことが求められます。

”多様性を増す”という強みがある中途採用をうまく活用してこそ、創造性と柔軟性があり変化の時代への適応能力を備えた企業になっていけるのではないでしょうか。

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