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社員研修に使える『キャリア理論』3選

定着

2019.10.01

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新入社員研修をはじめ、リーダーや管理職任用時の研修はもちろん、ロジカルシンキングや、タイムマネジメントに代表されるスキルアップ研修など、スキルや知識レベルの向上、またはモチベーション向上などを目的として、様々なビジネス研修が、日々行われています。

 

この研修機会は、受講生にとっては日ごろの業務から離れて、自分自身を振り返り、これからを考えるタイミングになります。 キャリコンサロンに所属する研修講師から、社内研修でも伝えやすいキャリア理論を3つに絞ってご紹介します。

今の時代を捉える「プロティアン・キャリア」

特にシニア層に対して、若手の仕事観を伝えていくときの例の1つとして「プロティアン・キャリア」をお話することが多くなりました。

「プロティアン・キャリア」とは、環境の変化に応じて自分自身も変化させていく、柔軟なキャリア形成のことをいいます。

「プロティアン=変幻自在な/多方面の」と訳されますが、役職など組織内でのステップアップに重きを置いた従来のキャリアに代わり、地位や給与ではなく、自己成長や気付きといった心理的成功を目指すキャリアの考え方です。

項目 伝統的なキャリア プロティアンキャリア
環境変化 環境変化は前提ではない 環境変化することが前提
主体 組織 個人
核となる価値観 昇進、権力 自由、成長
重要なパフォーマンス 地位、給料 心理的成功
重要な態度 組織コミットメント 仕事への満足感、専門性へのコミットメント
重要なアイデンティティ 私は何をすべきか 自分は何がしたいのか
重要なアダプタビリティ 組織で生き残ることができるか 自分の市場価値


従来のキャリアは、地位や給与の向上が重視されていましたが、若手社員は企業依存型ではなく、個人の中で感じられる仕事の充実感を成功指標と捉え、「自分は何をしたいのか」「社会に対し何ができるのか」という自己への意味づけを大切としている人が増えています。

昨今の若手社員は会社への帰属意識が低い傾向にあります。
ある調査では、新社会人の約3割程度は長く働くつもりで入社していますが、その1年後には、その約半数が同じ会社で働くことに対する考え方を改めているのです。

現代社会は環境の変化が激しく、どの企業においても5年後10年後の未来さえも定かではありません。一つのキャリアビジョンにこだわり続けることが難しくなってきている今、「プロティアン・キャリア」のような「環境が変われば、自分も変化していける柔軟さ」を若年層が重要視していることは、時代に合った変化なのかもしれません。

毎日をチャンスに変える「ハップンスタンスラーニングセオリー」

どんなに計画を立てても、ましてやどんなに研修を受けても、人生思った通りに行くわけではありません。しかし、今日の機会がいかにここにいる方々にとっても大切な出会いであるかを伝えるために、「ハップンスタンスラーニングセオリー」は、とても突き刺さる理論だと感じています。

「ハップンスタンスラーニングセオリー」は、アメリカのクルンボルツ教授が提唱した理論となります。変化の激しい現代において「キャリアの8割は『偶然の出来事』によって形成される。だからこそ、その偶然を最大限に活かしましょう。」という理論です。

研修においては、「今日のこの研修も8割の部分かもしれません。今日をチャンスに変えるのも皆さん次第です。」とお話すると、受講者の方は「では、どうすれば?」となります。
これを意図的にキャリア形成に活かしていこうとするのが、「ハップンスタンスラーニングセオリー」の考え方です。

偶然を自分のチャンスをするためには、次の5つのポイントを日ごろから意識しておくべきと言われています。

偶然を活かす5つポイント

① 好奇心 興味関心のある分野にとどまらず、普段から視野を広げるよう努めること。アンテナを鋭敏にしておくことで、新しいことに挑戦したい意欲が湧くこともあります。
② 持続性 失敗してもあきらめず向き合うこと。困難を避けたり苦手意識を持ったりすると、その先にある可能性が閉ざされてしまうことがあります。
③ 柔軟性 こだわりや理想にとらわれて、行動や思考を狭めないこと。常にフレキシブルな姿勢で臨機応変な対応を心がけます。
④ 楽観性 失敗や困難もポジティブに捉えること。何が起きても良い方向に行くと信じる態度は、自分自身をプラスの方向に運びます。
⑤ 冒険心 リスクを恐れず行動すること。不確実性の高い環境において失敗はつきものです。ある程度のリスクは引き受ける心構えが大切です。

多くの会社では過去の成功体験にとらわれて、社員が新しい発想ができなくなっている課題を抱えています。
まずは、様々な機会をチャンスととらえて『自分から挑戦してみる』ことの大切さは、共感を生みやすいと考えています。
研修の中でも、「今を大切に/日々の出会いを大切に」を伝えることができる理論として有効です。

年代ごとの役割を知る「ライフ・キャリア・レインボー」

「ライフ・キャリア・レインボー」は、古くからあるキャリア理論ですが、キャリアとは何かが包括的かつ本質的に説明されており、変化の激しい現代においても非常に参考になります。

この理論を提唱したスーパーによれば、人には誕生から死まで一生涯にわたって果たすべきさまざまな『役割』が存在するとし、具体的には次のような種類の役割が挙げられています。

1、子ども(息子・娘)
2、学生
3、職業人
4、配偶者
5、ホームメーカー(家庭人)
6、親
7、余暇を楽しむ人
8、市民

スーパーは、これらを年代ごとに役割の大きさを図に表し、通称「キャリアの虹」と呼ばれる概念に集約しました。これがライフ・キャリア・レインボーの名前の由来です。

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例えば図で見ると、40~50歳代は、様々な役割が最も多く重なり合い、果たすべきことが厚くなっています。この年代は昇進の分岐点になりやすく、仕事の責任も負担も増えますが、「職業人」としての役割に没頭し過ぎると、「配偶者」「家庭人」としての家事分担、「親」としての子育て・教育、あるいは「子ども」としての親の介護などの役割がおろそかになり、それによる家庭内の不和やトラブルが、かえって仕事に支障をきたしかねません。

人は生涯をかけて、そのときどきの自分の立場に応じた役割を担うことがわかりやすくまとまっています。

研修の中では、「今皆さんはどのような役割を担うことが多くなっている時期ですか?」と問いかけることで、自分自身の果たすべき役割を仕事だけではなく、家庭や地域などを視野を広げて考えることができるのです。
研修の意味付けと自身の整理のために、非常に有効です。

受講生に伝える際に注意すべきこと

ここで紹介しているキャリア理論は、数多くある理論のほんの一例でしかありませんが、通常の企業研修などに加えて受講者に伝えることで、より本来の研修に意味を持たせられると感じています。
ただし、受講生は「人事や、キャリアの関係者ではない」ため、伝え方に工夫は必要です。
特に考慮すべき点を、以下に記します。

① 理論名や理論の提唱者は重要ではない

当たり前と言えば、当たり前ですが、ついキャリア理論を知ってしまうと理論名などを教えなくては…と感じる方もいるようです。大切なことはあくまでその理論の内容です。紹介はもちろん問題ないのですが、深追いしないようにしましょう。

② わかりやすい言葉を大切に

キャリアに関する言葉は、海外から入ってきたものが多いためわかりにくいですし、難しい言葉も多いです。いかに、わかりやすい言葉で受講生に伝えていくかが大切です。

③ 『理論だけ』ではなく、『経験』と共に伝える

より受講生にわかりやすく伝えるためには、理論だけを伝えるのではなく、自身の想いや経験と共に話をすることで、より共感を持っていただくことができます。
「自分もこんな経験をした」「自分はこんな場面で○○理論と同じことを考えて乗り切った」など、具体例を交えて話をするようにしましょう。

研修×キャリアの可能性

受講生にとって、研修の機会は少なからず「自分自身の今」を考えるタイミングです。
この機会にキャリア理論をうまく取り入れることで、受講生に研修の意味合いを伝え、やる気につなげることができます。

HRラボでは、キャリアコンサルタントと共に開発を行うキャリア研修が強みです。豊富なキャリア研修プログラムを、HRラボ認定教育を受けた講師と共にご提供します。
(※キャリアカウンセリングと組み合わせることで、より一人ひとりのサポートが充実します。)