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キャリコンインタビュー
2020.10.23
「人生は“どこからダッシュしたって、また駆け上がれる!” キャリアコンサルタント安藤智子さんにインタビュー」
現在、東海支部で、ご活躍の安藤智子さん。実は、安藤さんの前職はエンジニア。全くジャンルの違うキャリアコンサタントという仕事をセカンドキャリアに選んだそのわけは?そして、今キャリアコンサルタントとして、大切にしていることなどを取材しました。
目次
-現在、東海支部で、リピート案件も多く多方面でご活躍ということですが、安藤さんがキャリアコンサルタントになられたきっかけを教えてください。
私は実は前職はエンジニアでした。30年間エンジニアをしていました。早期退職をした時に自分のセカンドキャリアをどうしようかと考えました。私自身は、ずっと物づくりに関わってきたのですが、その中でも自分が何を大事にしてきたのかを考えたら、やっぱり人なんですね。一緒に仕事をするチームのメンバーや社内外のユーザーであるとか。マネージャーとしてチーム運営や部下育成の機会もあり、人を大事にして働いてきたというのがありました。
-人を大切にされて働いてきたんですね。
はい、ただ、セカンドキャリアは、全く違うことをやろうって思っていて。というのも私、生命線が長いんです(笑)。これは長生きするに違いないから、『今から25年くらい働けるとしたら、全く新しいことをしてもいいよね』って思って。それでエンジニアは卒業することを決めました。
-生命線が長いから、セカンドキャリアは別の仕事をしたいってすごいですね。
そうですね、自分のセカンドキャリアを考えるにあたって、改めて自分が何を大切にしているか考えると人でした。なので、新しくやる仕事も人に関わることをしたいというのがあり、以前から知っていたキャリアコンサルタントの仕事を選びました。この仕事なら、私が働いてきた経験を活かせるんじゃないかと思って、50代からキャリアコンサルタントにチャレンジしました。
-全然違うジャンルでのお仕事ということですが、最初はどのようにお仕事を始められたんですか?
前職の時は東京にいたのですが、会社を辞めてから名古屋に引っ越しました。でも、名古屋には全く知り合いがいない。そんな状況で、新しいことをどうやっていくかと考えた時に、まずはあちこち種をまきながらいくしかないと思いました。
-種をまく、ですか?
そう、資格試験対策の勉強会だとか、資格を取ってからのセミナーなど、そこで人との繋がりを作っていきました。その中からお声がかかって、少しずつですけれども仕事できるようになったという感じです。まずはそういうネットワークを作ろうということで動いたのが最初ですね。
-では、このHRラボとは、どういう風に関わり始めたんですか?
HRラボさんとは、代表の塚田さんがセルフ・キャリアドックを展開するにあたって、中部東海エリアで人を探されていまして。それで、共通の知り合いの紹介で塚田さんと繋がることができて、そこからセルフ・キャリアドックのお仕事をいただいたのが始まりですね。
-セルフ・キャリアドックって、進んでいるところと進んでいないところ、かなり格差があると思うのですけど、名古屋の方は積極的なんでしょうか?
どうでしょう。正直なところを言うと、助成金があった時期に何件か企業さんに入りましたが、継続できているところは少ないです。そこが一番悩ましいことですね。
-たしかに。素晴らしい理念ですが、企業にとっては現実問題として難しさはありますよね。
そうですね。経営者の方にメリットを感じていただけるようなアプローチが難しいです。面談を受けていただいた方の満足度はかなり高いという評価もいただきますし、その自負があります。厚生労働省の調査でも、受けられた方の満足度は高い数字が出ていますよね。ですが、経営者目線でのメリットをなかなか伝えることができなくて、そこが課題です。
-では、今までで、大変だったことと、良かったなと思うことを教えてください。
そうですね、嬉しかったことの方は、継続で入らせていただいている企業さんがあるのですが、初回面談をして3ヶ月後に行ったときに、そこの空気、職場の空気がすごく変わっていたんです。
-3ヶ月で全然違う雰囲気に?
その会社のリーダーさんに『何があったの?』って聞いたくらい。そうしたら、『安藤さんに言われた通りにやってみた』って言ってくれて。3ヶ月前に私が伝えた一言を実行してくれたようなんです。『そしたら雰囲気が私が思っていた方向に自然と変わっていった』と言ってくださって。
-安藤さんの一言で、職場全体の空気が変わったんですね。
私の一言をその方が素直にやってくださった、そのしなやかさがあったからこそだと思うのですが、結果としてそういう風に言っていただけたのが、最近一番嬉しかったことですね。
-それは嬉しいですね。
個人に関わるというだけではなく、その職場全体の空気が変わったということが良かったです。その職場の他の方と面談しても、『最近仕事がやりやすくなった』とお話ししてくれましたし。職場の皆さんの表情が柔らかくなっていく、そういう空気をリアルタイムで感じられたのが、嬉しかったですね。
-現場全体が上手く作用していった感じなんですね。
そうですね。一人だけじゃなく職場全体が変わっていくのは嬉しいですよね。
-では、大変だったことはなんですか?
大変だったことは、リファーですね。
ある会社で、発達障がいの傾向があるのではないかと思われる方との面談をしたことがあります。最終的にはリファーという形で、他の方の力を借りるという風に持っていきました。この時、リファーするのも知識がいるなと思いました。キャリアコンサルタントとしての限界を超えるから、だからお願いというものでは決してないんです。
きちんとその方の状態を見ながら、適切に動かなければいけないですし、その方の状態を見立てたり、他の方に繋ぐにも、当時は発達障がいに関して十分な知識や経験がなかったので、そのときは本当に悩みました。
-それは大変ですね。自分で何とかしてあげたいというお気持ちがあったんですか?
というより、その方はやはりなかなか職場の中で理解してもらえない、話しを聞いてもらえない、それをキャリアコンサルタントとして私が関わったときに、『こんなに話しを聞いてもらったのは初めてです』と言って、信頼してくださるんですよね。
そうやって信頼してくださっているという重みみたいなもの。それと同時に、そういう方たちへの関わり方には、私は十分な知識がなくて、私自身がその方を傷つけることになったらどうしようという、そういう怖さですね。自分自身に対する怖さ。そういうものを感じていましたね。
-自分自身に対する怖さですか。
そうなんです。なので終わったときには、先輩のキャリアコンサルタントのスーパービジョンを受けたんです。そこで先輩から『安藤さんがやってきたことは決して間違えていないし、最初の見立てもそんなに間違えてない。ただあなたは知識が不足している。その知識が不足しているということで、あなた自身怖い思いをしたんじゃないの?』って言ってくださって。
それで、その勉強のための具体的なアドバイスをいただきました。
リファーするためにもそういう知識を自分の中に取り込んでいく必要があるなと思いました。なので、今は、キャリアコンサルタントの知り合いを通じて、ソーシャルワーカーの方たちとの繋がりを作りながら活動しています。
-やっぱりキャリアという仕事面についてだけではなく、その人の人生全体に通じることだから、いろんな知識を身につけたり、自分の経験の幅を広げたりするということが大切なんですね。
-安藤さんは面談のリピート案件が多いと聞いていますが、その秘訣はあるのでしょうか?先ほども、職場全体までワークしたというお話しをお伺いしましたが、実際現場では、どういうところを意識していらっしゃいますか?
基本ですよ、基本ですが、受容すること。まずそのままクライアントさんを受け止めるっていうこと。そこに尽きると思っています。
自分自身の尺度とは違う形の方とたくさんお会いしますが、それでも、その人を受け入れていく。私のキーフレーズは『あなたはそういう人なんだね』なんです。
その受容がスタートですね。そして次にどういうことを目指すかというと、一つはそこのコンサルティングの場を、クライアントさんご自身が自分を見つめていただく場にしていくということです。
“自分自身になれる時間にしていくこと”っていうのをまず目指します。
-クライアントさんが“自分自身になれる時間”ですね。
実はキャリアコンサルタントになってしばらくしてから読んだ、ロジャーズに関する本で気に入った文章があるんです。
『クライアントはカウンセラーとの関係の中で、自分が十分に自分自身でいられる空間を味わうことができる時に、“関係の中で一人になる”意識状態へ移行する。そういう状態にあるとき、その人は心のメッセージを聞くことができます』/諸富祥彦氏による『カール・ロジャース入門-自分が自分になるということ』より引用。
そんな空間を自分が作れるとしたら、もうすごく素敵だなと思ったんです。
-素敵ですね。実際は二人でいるけれど、クライアントが意識のなかで一人になり、自分自身でいられるということですね。
そうなんです、目指すのはそのような空間作りですね。その上で、ただそういう状態を作るだけではなくて、適切で良質な情報を提供する。助言とか指導という言葉は私の中ではピンとこなくてですね。“情報提供”なんです。
私自身もクライアントさんを感じながら、『この人に最適な言葉はこれじゃないのかな』『この情報じゃないのかな』と、自分の経験や知識の中から探していきます。それをお届けする場というのを目指していますね。
-では、こうした方がいいよ的な言い方ではなく、その人にとって良さそうな情報をご提供するという言い方ですね?
はい、そこは気をつけてますね。例えばこうした方がいいよっていうより、『ちょっと私の話をしてもいいかな?』って感じで、自己開示をします。
私の経験の中で、『私ね、こういうことがあったときに、こんな風にしたんだよ』と。そのように自己開示すると、クライアントさんはすごく興味を持って話を聞いてくださるんですよね。『あ、自分に繋がるところがある』っていうのを、その話の中で気がつかれていくような感じです。
-キャリコンの試験の時もアドバイスみたいな言い方はダメと散々言われてきました。でも現場になると、どうしたらいいかって相談されたり、解決したいから助けてというような状況もあると聞いていたので。実際はどういう風にお話しされているのかなと思っていたんです。
『こんな考え方もあるんじゃないの』っていう風に出してみて、すっと受け入れてくれる場合もありますし、怪訝な顔をしていたら『これは外したな』とか思いながら次を探しますね。まっすぐに、一直線にゴールにたどり着くなんていうことは、やっぱりなかなかないですけどね。
-では、安藤さんのお仕事は、今は企業の中に入っての面談と、個人からの依頼でしょうか?
私はフリーランスなのですが、メインは企業さんから依頼をいただいて、社員さんの面談をしています。個人の方からお話しをいただくケースもありますが、少数です。
-そうなんですね。日本ってお金を払って相談するという文化があんまりない気がしています。海外だと、すぐカウンセラーに相談とかあるようですね。
占いには行きますけどね(笑)。カウンセラーというところにはあまり行かれないですね。そこの認知度はまだ低いかなと思います。
-そうですね。例えば会社などで面談を受けるとか、一度経験があると伝わりますよね。
そうですね。入り口は会社の中で受けて、そのあと個人でというのが多いですね。そこで、もう少し深いことを話したいという流れで個人に。関係性のない方から個人でお話をいただくということはあまりなく、やはり知り合いのツテであるとか、キャリコンの仲間たちの紹介などですね。
-では、お仕事のメインは企業さんとのお取り組みが多いんですね。
そうですね、企業の中でのキャリアコンサルティングというのがメインです。そして、私の中でウエイトの高いお仕事というのが、エンジニアの派遣会社さんからのお仕事です。
-そうなんですね。やっぱり安藤さんがエンジニアさんだったということで、環境をわかっている、ご経験があるという、安心感があるんでしょうか?
そうですね、キャリアコンサルタントは相手の仕事のことに対して、知り尽くしている必要はありませんが、ただクライアントさんに、『私、元々エンジニアだったんです』と言うと、『それは話が早い』と言って、安心される方はいらっしゃいますね。時々、過去の自分が目の前に座っているみたいな、そんな気持ちになります。
-そうですよね。安藤さんがいてくれたら、なんだか頼りになりそうです。
どうでしょう。でも、面白いなと思うんですよね。キャリアチェンジするときに、エンジニアを卒業して、新しいことをしようと思ってキャリアコンサルタントになったのですが、結局今の私のキャリアコンサルティングを支えているのがエンジニアだった頃の経験なんですよね。そういった意味では、自分のキャリアっていうかな、それが今に繋がっている。昔の経験の中からお伝えできることもあるので、過去と今の自分っていうのが、繋がるような実感がありますね。
-そうですよね、素敵ですね。働く女性って、いろいろライフステージの変化だったりなどで、周りを優先してしまうことも多いと思うのですが、働く女性のお悩みについてはどうでしょうか?産後、キャリアに戻るのが大変というようなお悩みも多いと思うのですが。
そうですね、そういう時に何を伝えてるかな。女性であれば一時的にいわゆる“働く”だけに集中できない時期はあるよね。それを前提に『今できることは何か』を考えていこうという話をしていますね。
あと人生は長いので、『どのタイミングからダッシュしたって、また駆け上がれるよ』っていうお話をしています。私自身も、エンジニアとしていい仕事ができるようになったと思えたのは、30代の後半なんです。そこでやっと好きなものに巡り逢えて、本当に頑張って、そこからいろんなものがひっくり返っていったっていう経験があるんです。
だから、ダッシュするのは別にいくつからでもいい。頑張るタイミングっていうのは、人それぞれだし、そのタイミングがきたら頑張ればいいとは話しますね。そもそも私、このキャリアコンサルタントという新しいことを始めたのも、50歳を過ぎてからですし。
-そうだったんですね。50歳を過ぎてからのスタート、すごいです!勇気が出ますね。
では、キャリアコンサルタントとしてのマイルールはありますか?
マイルールよりはもうちょっと軽い感じで言えるものですが、私は面談の前に口角を上げるように意識しています。実は私、CDAの試験に向けて勉強をしているときに、緊張もあってなんですけど、顔が怖いよって言われて。そこから、面談の前には口角を上げる、それが私のキャリコンスイッチで、マイルールと言えるかな。
-いいですね、口角を上げるのが自分のスイッチ。
あとひとつね、必ずやっているのは、話を伺ったときの記録をきっちり残すこと。私の願掛けみたいなもので。またお会いできるといいなって、その時にこれを使うぞっていう気持ちで記録を残すことを、自分の中のマイルールにしています。やっぱり私にとってリピートでお仕事をいただけるっていうのは、特別嬉しいことなんですよね。
-そうですね、リピートは嬉しいですよね。
リピートして面談ができるというのは、その方の変化、長い時間軸での変化が見えるということ。その変化を、またクライアントさんにも気づいていただければいいなと思っています。『安藤さんと話したことで、私はこの1年間こんな風に変わってきたんだって今はっきりしました』って言われたことがありました。
-確かに、変化がわかると嬉しいですね。
そうなんです。クライアントさんご自身がそうやって自分の変化を認識していただいたことが嬉しかったんですよね。そういった意味で、私は一度だけの面談ではなくて、継続的にお会いして、その人がどんな風に変わっていくのかっていうのを見守っていきたいという気持ちがあります。
-そうなんですね、素敵ですね。では、最後にキャリアコンサルタントの仲間に一言メッセージみたいなのをいただけますか?
クライエントは、一人ひとり違います。自分一人の知識とか経験だけでは、なかなか追いついていかないところもあります。なので、キャリアコンサルタント同士で、いろんな年代の方、いろんな働き方の方、いろんな業種の方も含めて、ネットワークを作っていけるといいなと思います。
それと、私が活動していて実感として思うのは、キャリアコンサルタントの認知度はまだまだ低いということ。その中で、普及を拡げていくためには、それぞれのキャリアコンサルタントがその時にやれることを最大限やるというのが大切だと思っています。
-認知度がまだ低い?
そうです、まだ認知度が低いということは、誰かにとっての“初めてのキャリアコンサルタント”に自分がなる可能性があるということ。そこで、『キャリアコンサルティングっていいよね』って思ってもらえるような場を作っていく。そういうことが大事だと思います。
-自分が誰かにとっての初めてのキャリコンになる。確かにそうですね。
そう、キャリアコンサルティングはまだ先頭の状態。それはまだ始めたばかりの資格を取ったばかりの方も含めて、一回一回の面談で、『いいね』って言ってもらえるようにしていくことが大事。そこを頑張っていくことが、今の私たちの責任だよというのがメッセージです。
-素敵です。ありがとうございます。資格を取り立ての私にもできることがあるかな?って思い始めました。
あります、本当に一人ひとりの積み上げですから。1対1の面談を通して、クライアントに満足いただく。そう積み上げていくことが大事なんですよね。
-ひとりひとりのキャリコンの積み上げですね。
そうです、始めたばかりでも同じです。この仕事素敵ですよ。私本当にこの仕事好きで。なので、ぜひキャリアコンサルタントとして楽しんでください。
-はい、“キャリアコンサルタントとして楽しむ”ですね。
温かいお言葉をたくさんいただいきました。すごく勇気づけられるし、これからキャリアコンサルティングを受ける人にもとても安心感が出ますね。
安藤さん、ありがとうございました。
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