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2020.04.29
4月は多くの企業で、新しい年度が始まります。 新しい組織、新しい上司、新しい仲間、そして新しい仕事に関わる方もいらっしゃると思います。 その新しい組織の中で、同じ目的/目標に向かってミーティングをおこなっていく際に、ファシリテーションスキルがあればより効果的な時間となるはずです。特に、最近は「オンラインミーティング」の機会も増え、パソコン越しであっても、参加者の空気を感じ取り、意見を引き出しながら、当初想定していた目的、またはそれ以上の状態に到達することが必要です。そのために「ファシリテーター」という存在がより重要となってきています。
今回は、ビジネスを行う上で必携スキルとも言える「ファシリテーション/ファシリテーター」のポイントをお伝えいたします。
ファシリテーションとは、ミーティングが生産的かつ効果的に進むように発言を促進し、話の流れを整理し、また参加者たちのさまざまな意見を収束させ、予定時間内に参加者の合意形成をサポートするスキルや振る舞い方を表します。
よく「司会進行役」と思われる方がいますが、それだけにとどまるものではありません。
ファシリテーションとは、元々「プロセスや活動を容易にすること」という意味をもっています。集団活動をより活発化させるためにチームワークを促進し、個人プレーでは決してつくれない成果を生み出すための技術なのです
そして、その中で、ファシリテーターとは、グループや組織でものごとに取り組むとき、中立的な立場から、進行の舵をとり、スムーズにより良い結論へと到達するように導いていく役割を担う人のことです。
仕事には、目的や目標となるゴールがあります。
しかし、複数の人が参加するミーティングにおいては、初めは様々な意見や考えを持っているものです。ミーティングの中で、その異なる見解や考えを出し合い、最適な答えを出すため
中立的な立場からかじ取りしていく存在が、ファシリテーターなのです。
ファシリテーターは、参加者の声をただ聞いて、時間通りに進行するだけの存在ではありません。ミーティングの目的を達成することはもちろん、参加者に理解を促し、次の行動へとつなげる役割がファシリテーターであると考えています。
そのため、ファシリテーターがスムーズなファシリテーションをしていくためには、多岐にわたるスキルや工夫が必要とされます。
例えば、次のようなものが挙げられます。
準備段階
① ミーティングの目的や、参加者が得るものは何かの整理
② 進行のイメージ作り(確実に進めるパート/参加者からしっかり意見を引き出すパート)
③ 事前に参加者に目的や内容を知らせて、役割や期待を上げるコミュニケーション
特に①、②は大切です。ファシリテーター自身が、目的や進行を理解できていない中で行うミーティングは、必ずあいまいな結論となってしまいます。
準備をどの程度しっかりできるかによって、ミーティングの成否が変わってくるといっても過言ではありません。
もちろん、参加者に必要な準備を促す役目も大切です。
ミーティングの場で
ミーティングを進める際にも、導入から終盤まで、様々なファシリテーションスキルが必要となります。
④ ミーティングの目的やルールの確認
⑤ 参加者が話しやすい空気感作り(アイスブレイク、発表者のここまでの状況を伝えるなど)
この④、⑤にあたる導入段階の空気感作りは、その後の発言のしやすさにつながるため、非常に重要です。しかし、全体の時間もあるため、できるだけ時間をかけずにで良い空気感を出せる工夫をしましょう。
⑥ 発言者の意見を否定せず、積極的に聞く傾聴スキル
⑦ 更なる参加者の意見喚起や、思考を深めることにつながる質問スキル
⑧ 意見や意見の裏にある想いをくみ取って、端的にまとめるスキル
⑥、⑦、⑧は、傾聴力/共感力/質問力を始めとしたスキルです。コーチングやキャリアコンサルティングにも通じるスキルです。
傾聴力を発揮するためには、ファシリテーターは、ただ聴くだけではなく、その発言者の意図をくみ取れるように聴くことができれば、理解を深めるための質問などもしやすくなります。
また、発言者の意見を、端的にまとめて参加者たちに投げ返してあげることで、全体の理解も深まっていきます。参加者が、同じ理解をしているとは限りらないという前提で、言葉でまとめることを意識して進めるとよいでしょう。
⑨ ミーティング全体を論理的に結論に導くスキル
⑩ ホワイトボードなどを使った表現スキル
⑪ 時間管理スキル
⑨、⑩、⑪は「プロセスを管理する力」になります。
ミーティングを円滑に進めるためには、参加者の発言に任せるだけではなく、時には必要な介入を行う場合もあります。話し合っている内容をまとめ、論点を整理することで、次に進めることができます。
また、参加者の発言だけでは、議題について思考を深められていない場合もあります。出てきた意見をホワイトボードにまとめたり、図示したりするなど、視覚的にもわかりやすい工夫をすることで結論に向かいやすくなります。
そして、ミーティングは多くの場合、開催時間が決まっています。時間の中で結論に向かう工夫、または結論が出ずとも次のアクションにつなげるための配慮が必要となるでしょう。
ミーティング後
ファシリテーターの役割は、ミーティング後も続きます。
⑫ ミーティング内容をまとめる
⑬ 次に向けてやることを指し示す
⑫、⑬をおこなうことで、結論と次へのSTEPを明確に示すことで、仕事の生産性を上げるだけではなく、参加者のやる気にもつなげることができます。
ファシリテーションがうまくいくと、組織にとってはどのような効果が表れるでしょうか。
主なものは以下の通りです。
◆生産性の向上
チームの中で、より多くの意見が出しやすくなり。付加価値の高い成果を生み出しやすくなります。
◆ミーティングの時間短縮
ミーティングの時間管理ができ、議論が収束しないという事態を防ぐことができます。
◆次のステップへの移行
話し合いの成果としてまとめた次へのステップが、明確に共有されるため、確実に実行に移されます。
◆参加者のモチベーション向上
参加者の同士のコミュニケーションが活性化され、話しやすく、居心地のいい雰囲気を作ることができるため、モチベーションを向上させることができます。組織作りへの良い影響も与えます。
◆チームワークの向上
お互いの信頼関係につながり、参加者のチームワークを向上させることができます。
最近は、オンラインミーティングの機会が急速に増えてきました。より一層のファシリテーションスキルが求められるようになってきています。
リアルな場を通じたミーティングとは違い、オンラインミーティングならではの注意点を以下にまとめましたので、ご覧ください。
発言者の意図を理解するために時間がかかる
オンラインミーティングでは、画面を通して相手の表情を見て声を聞くことになります。
リアルな場よりも、視覚情報と聴覚情報が不足しがちになります。そのため、より耳を傾けて発言を聞く必要があります。
発言者が偏る
オンラインでは参加者の発言タイミングが、より難しくなる傾向があります。そのため一部の強い意見を持った人の発言が中心となり、他の参加者が発言をしにくいといったケースがよくあります。
参加者全体に話を振るなど、全員が関わりやすい雰囲気を作りましょう。
共通認識を持っているかがわかりにくい
ミーティングを進めていても、オンラインだと同じ理解をしているかわかりにくいものです。特に資料もなく、発言だけで進めるミーティングはなおさらです。資料を提示しながら進める、話し合った内容などをリアルタイムで表示していくなど工夫をするとよいでしょう。
一体感が生まれにくい
リアルな場とは違って、参加者は音声をミュートにしていたり、表情が見えなかったりなど空気感が掴みづらい状況があります。それは、他の参加者にとっても同様です。あえてその場でミーティングの感想を話してもらったり、ミーティング後に意見を出してもらったりするなどの工夫をするとよいでしょう。
日々の仕事の中で、より生産性を上げ、業務を効果的に進めるためには、ミーティングは欠かせない存在です。人によっては複数のミーティングを担当しながら進める方もいるでしょう。
そのミーティング1つ1つが、ファシリテーションスキルと身に付けたファシリテーター共に運営できれば、より発展性のある仕事へとつながるはずです。ぜひ、このコラムを参考にし、日々のミーティングに活かしていただければと思います。