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採用
2025.06.19
「移動困難者」とは、障害・病気・介護・子育てなどの理由で外出が難しい方々を指します。慢性的な人手不足が続く日本社会において、リモートワークで活躍できる移動困難者は、新たな労働力として大きな可能性を秘めています。本イベントでは、HR領域の業務と移動困難者の適性に着目し、両者のシナジーを探りました。
日時 | 2025年6月10日(火) 19:00~20:30 |
開催形式 | オンライン開催 |
ゲストスピーカー | 株式会社オリィ研究所 加藤様、牧野様 |
企画・運営 | HRラボ株式会社 田中、塚田 |
参加者 | 約30名 |
アジェンダ
1. オープニングトーク
2. 牧野美保さんによる経験シェア
・車椅子ユーザーとしてHR領域に挑戦したリアルな体験
3. 「移動困難者の働く」可能性と課題
・テレワーク支援の最前線と企業導入のポイント
4. ディスカッション、参加者同士で意見交換
5. 全体シェア&質疑応答
6. クロージングメッセージ
慢性的な人手不足が常態化する昨今。また、これからの未来を見据えても、さまざまな状況を抱えながらも誰もが自分らしく活躍できる仕組みや環境づくりを推進していくことは急務です。
本イベントでは、採用定着支援において1,000社超の実績があり、自社でも多様な働き方の実践を行うHRラボ株式会社と、移動困難者・障害者のテレワーク就労支援をリードしてきた株式会社オリィ研究所とともに、HR領域のお仕事と、移動困難者の働く可能性の広がりについてみんなで考えました。
本イベントでは、「移動困難者」を障害・病気・介護・子育てなどの理由で外に出ることが難しい方々と定義しています。
参加者にイメージを問いかけたところ、多様な声が寄せられました:
・寝たきりの人
・子連れの保護者
・ご自身で異動することが困難である上肢下肢に障害がある方
・車いすを利用されている方
・特定疾患(クローン病等)
・高齢により、歩行が困難な人
・パニック障害や、気持ち的に外に出られない方
・運転免許を返納した田舎の人
こうした声からも、「移動が困難」という状態は決して一つの属性や状況に限定されないということ。また、加齢や病気、育児や地域特性など、誰もがいつか移動困難者になりうる可能性もあるという気づきが、参加者全体に共有されました。
私たちは、こうした多様な状況に寄り添いながら、すべての人が働く選択肢を持てる社会づくりの必要性を再確認しました。
大阪在住で車椅子生活を送る牧野さんは、株式会社オリィ研究所が運営するテレワーク転職支援サービス「FLEMEE」にて、キャリアアドバイザー(CA)としてフルリモートで勤務しています。求職者との面談を最優先に、推薦書添削や選考・クロージング面談にも携わりながら、さまざまな人の働き方を支援しています。
5歳で横断性脊髄炎を発症して以来、車椅子ユーザーとしての人生を歩む中、就職活動で「車椅子の人を採用したことがない」という理由で不採用となった経験が、働く選択肢の少なさや社会の課題を実感させました。それでも、アパレルでの接客アルバイト、ブライダル業界での勤務、事務職など、職種の枠を越えて様々な経験を積み重ねてきました。その歩みの中で出会ったのが、オリィ研究所の「分身ロボットOriHime」。これは外出困難な人が遠隔操作で接客業務に参加できる革新的な取り組みです。
牧野さん自身も「OriHimeパイロット」として接客体験をしたことが転機に。自らの経験を活かせる場としてFLEMEE立ち上げに手を挙げ、今のキャリアにつながっています。
「車椅子は私にとって切っても切り離せないもの。でも、それがあるからこそ届けられる支援がある」。牧野さんは今、当事者だからこそ生まれるリアルな視点と、誰もが自分らしく働ける社会の実現に向けて日々取り組んでいます。
ディスカッションでは、
『HR領域のどのような仕事が 「移動困難者の働く」と親和性が高そうか』というテーマについて意見を交わしました。
移動困難者の働く可能性についてはさまざま考えられますが、今回は中でも、HR領域のお仕事との親和性に着目しました。リモートで取り組みやすい部分が多いこと、また社会人経験が多くない移動困難者にとってもHR領域の職業人としての成長機会として適した業務内容ではないかと考えています。
■移動困難者への理解が自分自身まだ不足していることに気づきました。私自身が理解を深めたうえで企業様に提案していく必要性を感じました。
■HR領域でのお仕事の可能性を感じられつつも、就業を一度も行ったことがない方に関しては、個人の力だけで就業するのはなかなか難しいとも感じています。事業者が代行サービスとして請負ったうえで、就業経験のない人が経験を積んでもらうことで自立支援につながるのかもしれません。
■移動困難者の立場での職業マッチングでHR領域は理にかなっていると感じました。
■求人票作成や人材管理、データ整備など、締切ベースで進められる仕事は柔軟に対応できる。
■まずは人事部門に配属し、適性を見ながら段階的に配置転換を行う方法も有効。
■AIを活用した訓練により、業務スキルを補完しながら就労の幅を広げられるのでは。
■“テレワークだからできる”という前提だけではなく、個別の背景や環境に応じた設計と支援が必要。
■形式的な在宅就労ではなく、スキルや業務内容とのマッチングが重要。
■就職支援における「内定後フォロー」「研修支援の寄り添い」といった就業プロセスの継続的サポートでの活躍。
■CX(候補者体験)重視の視点。単発支援ではなく、採用〜定着〜活躍までの伴走型支援が重要であり、大きな活躍の場ではないか。
■グループディスカッションでは、実際に障がいがある方の採用を経験した方や企業側として人事の立場にある方、ロンドン大学で障害者雇用の研究をしている方など、いろんな視点が話が出て面白かったです。
誰もがその人らしく働ける社会の実現に向けて、今、私たち一人ひとりの想像力と行動が求められています。HRラボはこれからも、「多様な働き方が実現する社会」をつくるために、キャリア支援の現場からその一歩一歩を着実に歩んでまいります。