お問い合わせ

mail

webからお問い合わせ

telephone

03-6868-4353

受付時間/9:00〜19:00(平⽇)

company logo 浅井塾
HR Column

キャリアコンサルタントに関するコラムや最新情報など随時更新しています。

人的資本経営

2025.09.18

news image

日本の医療現場では、慢性的な人材不足と高い離職率が深刻な課題となっています。 特に看護職においては現場の負担が増す一方で、働き続けることの難しさを感じる声が後を絶たちません。 こうした状況は単なる人手不足ではなく、構造的な問題として捉える必要があります。

2040年に向けて加速する人材不足

厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」によると、2040年には医療・福祉分野で1,070万人の就業者が必要とされる一方、供給見込みは974万人にとどまり、約100万人の人材不足が懸念されています。

これは少子高齢化による現役世代の減少と、高齢者医療・介護ニーズの増大が同時に進行する日本特有の構造的課題でもあります。
この需給ギャップは、単に「人を増やせばよい」という問題ではありません。
現場で働く人々が「働き続けたい」と思える環境を整備しなければ、採用してもすぐに辞めてしまう“回転ドア型”の人材循環が続いてしまいます。

看護職における離職率の実態

京都橘大学の調査では、ある県内120施設における常勤看護師の離職率は14.4%、新卒看護師は13.8%。全産業平均を上回る水準です。
これは全産業平均を上回る水準であり、特に新卒者の早期離職は、教育コストや現場の士気にも大きな影響を与えます。

離職の背景には、「人間関係のストレス」「業務負担の重さ」「精神的疲労」などが挙げられており、ライフステージの変化だけでは説明できない職場環境の課題が浮き彫りになっていることが伺えます。

出典先:日本医療 ・病院管理学会誌

採用コストの現実と持続可能性

看護職員の採用コストは、平均約10万円(中央値3.4万円)。
さらに、人材紹介会社を利用した場合は60万〜150万円に達するケースも報告されています。これに加えて、採用活動にかかる時間的・人的コストも無視できません。採用しても定着しなければ、これらは「投資」ではなく「損失」になります。

だからこそ、離職防止は経営戦略そのもの。採用と定着の両輪を整える必要があります。

「辞めさせない」から「働き続けたい」へ

今、医療現場に求められているのは、「辞めさせない」ための対症療法ではなく、職員が「ここで働き続けたい」と思える職場をつくることです。

・心理的安全性のある職場
・柔軟な勤務体制
・キャリア支援制度
・尊重し合える文化

これらが整ったとき、初めて人材は根づき、組織の力となります。

解決のヒント ―「働きがいと成長実感」を育む仕組み

離職率改善には、職員が未来を描ける仕組みが必要です。

①キャリア面談制度の導入
 年1〜2回、看護師・介護士が自らのキャリアを振り返り、希望を語れる場を設ける。

②キャリアパスの明示化
 「専門職」「リーダー職」「教育担当」など多様なルートを設計し、将来像を提示する。

③メンター制度の活用
 新人と中堅職員をペアにし、日常的に相談できる仕組みを整える。

④評価制度の見直し
 年次ではなく「挑戦・努力・貢献」を評価項目に取り入れる。

これは単なる「離職防止策」ではなく、中長期的な競争力強化の投資です。

成功事例

■ 事例①:中堅病院E院

E院では、看護師の離職率が3年で20%を超えていました。そこで キャリア面談とメンター制度 を導入し、個々の希望に沿った配置転換やスキル研修を実施。結果、3年以内離職率が15%から8%に改善しました。

■ 事例②:社会福祉法人F施設

F施設では、介護士の離職率が高止まりしていました。そこで キャリアパスと評価制度 を整備し、「新人教育担当」「チームリーダー」など役割を明確化。さらに頑張りを評価に反映した結果、職員の定着率が向上し、紹介による採用増加にもつながったのです。

キャリア面談 × キャリアパス × メンター × 評価制度の4つが揃うことで、職員は安心して将来を描けるようになります。日々の努力が評価され、挑戦し続けられる職場こそが、定着と成長の好循環を生み出します。
これらの取り組みを組み合わせることで、職員一人ひとりが「ここで成長できる」と実感できる環境が整います。結果として、離職防止にとどまらず、組織全体の活力と持続的な成長へとつながります。

HRラボからのご案内
「うちの施設だと何から始めればいい?」
「制度の名前は分かるけど、現場での落とし込みがイメージできない…」

そんな方へ、1社ごとの個別オンライン相談(30〜45分)を承っています。

<お問い合わせフォーム>
下記よりお申し込みください。担当より日程候補をご連絡します。
HRラボ お問い合わせフォーム

まずはお気軽にご相談ください。現場の“モヤモヤ”を一緒に整理し、実行可能な第一歩をご提案します。

まとめ

中堅病院における看護師・介護士の離職率改善は、単なる人員確保ではなく、組織の未来を左右する戦略課題です。
キャリア面談やパス設計、評価制度を組み合わせることで、職員一人ひとりが「ここで働き続けたい」と思える環境をつくることができます。
それは同時に、患者・利用者へのサービスの質を守り、地域から信頼される医療機関となる道でもあります。

#医療業界 #介護業界 #中堅病院 #離職率改善 #キャリア支援 #キャリアパス #HRラボ #人材活躍 #地域医療