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セミナーイベント情報
2023.12.03
キャリアコンサルタントコミュニティ「キャリコンサロン」にて、浅野 衣子先生をお招きし、社会構成主義時代のカウンセリングとして注目されているナラティヴ・アプローチをキャリア・カウンセリングに取り入れた事例を交えながら、お話いただきました。
日時 | 2023年12月3日(日)10:00~12:00 |
開催形式 | オンライン開催 |
参加者数 | 約30名 |
講師 | 株式会社キャリア開発サポーターズ代表 浅野衣子 氏 |
ファシリテーター | HRラボ株式会社/キャリコンサロン代表 塚田亜弓 氏 |
【講師】 浅野 衣子氏
株式会社キャリア開発サポーターズ 代表取締役
キャリア開発カウンセラー®(日本キャリア開発研究センター認定)
認定スーパーバイザー(日本キャリア・カウンセリング学会)
地域若者サポートステーション専門委員会メンバー
ナラティヴ実践協働研究センタースターティングメンバー
京都市生まれ。百貨店で販売・仕入れ・社員教育に従事。2001年にキャリア開発支援者として独立。キャリア開発に関するワークショップやカウンセリングを企業や個人に提供。ライフワークとして、キャリアコンサルタント等の支援者の支援に取り組んでいる。
執筆図書:ナラティヴ・セラピーのダイアログ(北大路書房)
【ファシリテーター】 塚田 亜弓氏
HRラボ株式会社 代表取締役
キャリコンサロン 代表
国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー
採用、教育研修、労務制度づくりなど、幅広くHR業務に従事する。2017年1月にHRラボ株式会社を設立し、社長就任。2018年12月キャリコンサロン設立。創業以来、企業内キャリアコンサルティング制度の導入サポートを全国1,000社以上担当。
1.キャリアのカウンセリングについて
2.社会構成主義時代について
・ナラティヴアプローチは社会構成主義を背景にしている
・セラピーとカウンセリングは同義語として使われている
・社会構成主義のカウンセリングの特徴
3.ナラティヴ・アプローチについて
助言・および指導:キャリア・ガイダンス
相談:カウンセリング
・Be 在りよう/在り方
・Do 実践/スキル/やり方
・Theory 理論/知識
この3つをぐるぐる回していくことがキャリアコンサルタントとしての成長につながります。
※キャリア・カウンセリングはカウンセリングの一領域
結果に導くことを目的とせず、セラピストはクライアントに耳を傾け、クライアントと協力して対話を生み出していくことが仕事。セラピーはクライエントとセラピストが対等な立場で存在し、共同作業で行われるものです。
例えば、上司と合わなくて仕事が辛いと言う場合、どちらかが悪いという方向で結論を出そうとすると「自分がいなくなるか」「上司がいなくなる」かしかなくなります。しかし、ナラティブアプローチで「人が問題ではない」という視点を切り替えてみると、そこに何かがあったからだという観点に立つことができます。
ナラティブセラピーはカウンセリングやコミュニティワークの中で、相手に敬意を示し、非難しないアプローチなのです。ナラティブアプローチでカウンセリングを受けると、誰も悪者にならないので、居心地がよいという感想を受けることがあります。
ディスコースについて
「転職は35歳までにしないといけない」「子育ては夫婦共同で」など社会の中で強く押し出され、多くの人が行動の指針にするほど影響を与えるものはでディスコースです。「やりたいことを仕事にしよう」というディスコースがあるとき、「やりたいことを見つけなければならない」と自分探しの旅に出て、やりたいことが見つからず、人生の方向がわからなくなるということがありますが、それはディスコースに支配されているということです。
ディスコースにとらわれて思考しているクライアントの、まだ語られていない自分の言葉を質問を重ねることで聞き出すことがカウンセラーの仕事です。
ナラティブアプローチは以下の立場に立ってカウンセリングを行います。
●クライエントは自分の人生の専門家。
●何もできない人とみなさない。
●人が問題ではない。誰も責めないアプローチをとる。
問題の影響を減らすことができるのは誰かというと、本人以外にはいません。そのため、クライエント自身に表現してもらう必要があるのです。
ただし、カウンセリングは日常会話では話すことのない話をする場であり、自由に話してくださいというだけでは話し出すことはできないものです。そのため語りに招き入れるカウンセラーの質問力が大切になるのです。
●わかったつもりにならない
●語られることでしか理解できない
●何が語られてないのかに興味を示す
という心構えが大切です。
同じ言葉でも一人ひとりの意味することが異なることに注意しましょう。
クライエントが語る言葉には辞書的な意味はありません。カウンセラーが容易にわかったつもりになって聞いていくと、ずれが生じてしまうことも心にとめましょう。
ナラティブアプローチでは語られていないストーリーにも目を向けます。
例えば
●今、ここでの話、人生の歴史の話、将来の夢や希望
●状況(事実)、感情(気持ちや考えや思い)
●今の考えは誰からの影響なのか、誰に影響を与えているのか
●何を大切にしようとしているのか
カウンセリングはクライエント中心の場です。ナラティブアプローチはそのことを改めて心にとめてカウンセリングができる有効な手法です。
キャリアコンサルタントの方が「ナラティヴ」と聞くと、サビカス先生と思い浮かべられるのではないでしょうか。サビカス先生はキャリア理論をベースに物語る(ナラティヴ)ことで、人生のテーマを語ることの出来るキャリア構築理論を提唱されました。
今回のナラティヴ・アプローチは、サビカス先生の理論とは異なります。家族療法に携わる人たちが提唱したもので、社会構成主義をベースとして様々な技法があります。技法もたくさんありますが、取り組む姿勢や態度も大切にします。それだけにわかりにくいところがたくさんあり、2時間という限られた時間の中で「はじめの一歩」としてご紹介させていただきました。
「やっぱりわかりにくかった」という声や「これまでわからなかったことが解けるようにわかった」という真逆の声をいただきました。このように真逆の声をいただくのも私自身頷けます。私も初めてナラティヴ・アプローチに出会った時に「わからないけど、何かいい」という感想を持ちました。わからないものに興味を持ち、学び続け実践する中で少しずつ修得してきました。
簡単に効果を求める時代にあって効果や効率を求めることも大切ですが、じっくり取り組むのも必要なのではないでしょうか。事実、これまでのキャリア・カウンセリングにナラティヴ・アプローチの視点を加えることで、クライエントとの会話が豊かになり、問題はなくならなくても、クライエントの方が自分を受け入れ、自分なりに一歩踏み出せるようになっていかれる姿を何人も見送ることが出来ています。
「人が問題ではない、問題が問題なのだ」というマイケル・ホワイトが言ったように、人を責めないアプローチです。一緒に学び、取り組んでいただく方が増えていくと嬉しいです。
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