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セミナーイベント情報
2020.05.10
昨年100名以上のご参加をいただいた「キャリコンフェス」。今年はコロナ禍の影響により、オフラインイベントを延期し、まずは5月に3日間に分けて3つのテーマのレッスンと交流会を行うオンラインイベント「キャリコンフェスonline」として実施することとなり、5月9日17時よりDAY1「キャリア×メンタルヘルス」が開催されました。
5月9日実施のDAY1では、目黒駅前メンタルクリニックの小川耕平医師を講師に迎え、「「キャリア」と「メンタルヘルス」の深い関係~キャリコン・人事労務担当者・医師の相互理解を深めるヒント~」を題材に、小川先生が対応されたケースの実例を踏まえ、メンタル不調を抱えた方への企業・キャリコンの対処やキャリコンから精神科医へのリファーの際のポイントなどを講演頂きました。
目次
日時 | 2020年5月9日(土) 17:00~19:30 |
開催形式 | オンライン開催 |
参加者数 | 60名(当初予定の40名から増席し、完売!) |
講師 | 目黒駅前メンタルクリニック 医師/産業医 小川耕平先生 |
進行 | キャリコンサロン運営事務局 塚田・杉島 |
【第1部】オンラインレッスン
「キャリア」と「メンタルヘルス」の深い関係
~キャリコン・人事労務担当者・医師の相互理解を深めるヒント~
❑事前に参加者から寄せられた質問への回答
❑実際の症例の紹介
❑症例の解説
❑精神科医への適切なリファーのコツ
【第2部】オンライン交流会
グループに分かれて、
❑自己紹介
❑オンラインレッスンの感想の共有
◆支援の現場で適応障がいの方と接する際に気を付けること
・適応障がいはストレスが原因となる病気。ストレスは目に見えないので、人により状況は千差万別。場合によっては励ましを交えつつ丁寧に話を聞くことが第一歩。中には受け止めきれないような大きな感情をぶつけられるケースもあるが、共感しても冷静に相手を見ることを心掛けている。
・企業などで対応する際は雇用の問題など利害関係が絡まないように留意する。
・同じ抑うつ症状を呈する適応障がいとうつ病の場合、うつ病では励ますことは原則禁忌とされるが、適応障がいの場合は時に励ますことが重要なこともある。
◆アフターコロナ後の変化とメンタルヘルスの関係性について
3.11の東日本大震災後に精神科の患者が増えたこともあり、今回もメンタル不調者の続発が予想される。経済の問題も絡んでいるため、自殺者の増加が心配。援助者が防波堤になる努力が必要。
◆メンタルヘルスの学び方について
最低限の禁忌事項を押さえてとにかく広く浅く学ぶこと。専門家になろうとしなくていい。深い所は医師に任せてほしい。
ただ、メンタルヘルスを相談したいと思う援助者になるためには総合的な人間力が不可欠。相談者との共通項を増やすなどアイスブレイクのしやすい知識や深い教養に裏打ちされた多くの引き出しを用意すること。
◆メンタルヘルス不調を見抜くポイント
採用時:メンタル不調歴とコミュニケーション能力やパーソナリティ、性格に目を向ける。
協調性の有無、自責的など考えこむタイプ、他責的な傾向のある性格かどうか。
援助者として:普段との違いからメンタル不調を疑う。
服装の乱れ、遅刻や残業の増加など勤怠の状況の変化、愚痴っぽいなど言動の変化
◆適切なリファーのための準備
事前に情報をまとめ、医師に説明できる準備をしておくことが大切。
情報の例:会社規模、業種、業界、立地、休職など会社制度、本人の職種、職位、業務内容等。
うつ病にかかった独身の一人暮らしの男性は自殺の危険性が相対的に高い(実際にそういった事例もある)。大切なのはあくまで本人の命。
①発覚時-まずは家族と連絡を取ること(受診や入院手続きにも家族の協力が必要になる。)また、可能であれば本人の家に行って生死を確認すること。
②本人宅訪問時-家に行ったら、警察や大家の協力(不法侵入などのトラブル防止)も得て中に入り、本人と顔を合わせることが大事。
③病院受診・確定診断後-「頑張って早く戻ってこい」や「ポストは大丈夫」などの励ましはうつ病には禁忌。休職等の手続の話も大事だが、安全の確保が最優先。
ただ、気楽に考えていいと声をかけるのも「怠けているのでは」と自責の念につながる可能性があるので注意が必要。
◆キャリアとメンタルの問題は混在していることがほとんど
キャリアとメンタルの問題が両方あった場合には、まずはキャリアの問題は脇に置き、専門家の助言を受けること。メンタルの問題に見えて体の問題がある場合がある。その次がメンタル、最後にキャリアの問題の順で対処。
何より命優先。メンタル不調の陰に体の不調や介護など家庭の問題、経済的な問題などが存在することもあるので適切な優先順位をつけた対処を。
◆支援での注意点
・発達障害とギフテッド(才能)を混同しない。
ギフテッドを発達障がいを持っている人の特徴として結びつける方も多いが、これは例外的な話で、普通の人も多く存在している。
この認識が広がることで、ギフテッドではない「ごく普通 」の発達障がいの方を苦しめることにもつながる。平凡でもいいのでその人らしく生きられることが大事。
・精神科での対応について
所見(ストレス反応等)と病気の診断が結び付けられ、キャリアの問題がメンタルの問題にすり替わって薬物治療などに流れるケースが多い。
話を聞くと明らかな自己理解・仕事理解の不足や周囲とのコミュニティの構築などの問題が見えることもある。相手の仕事の理解、キャリアのどこに引っかかっているかに目を向ける。
→小川先生はtwitterなど薬物外の手段を使って対処するケースも多い。
◆キャリコンとしてのセルフケア
まず自身がネガティブな感情を持っていることを認識・意識することが大事。
看護師はブリーフワークなど、感情と向き合うワークを定期的に行っている。
◆派遣の現場などで、過去のメンタル不調歴(1年前・5年前など期間の開いているもの)がある方が来た場合にどうとらえるか?
メンタル不調を繰り返している場合は問題だが、医師の診断や受診後の就業状況等を踏まえて働ける前提があるのであれば、問題ないという認識。
受け入れは受け入れ先の人事担当者の姿勢にもよるが、派遣する側はいい方だと思えば自信をもって薦めてほしい。
◆キャリアに対する医師の理解不足が原因でキャリアの問題が適応障害になってしまうことがある。
基本スタンスとしてはメンタル不調の疑いなど不安がある場合は積極的にリファーしてほしい。
◆ストレス反応とうつ病の見極め
メンタル不調が疑われる方にはまず休むことを勧めている。ストレス反応ならこれだけでよくなることもある。一方、うつ病の場合は、休んだだけでは回復しないケースが多い。
◆医師との連携
精神科へのリファー時、メンタルヘルスの異常ではないと発覚した後、キャリコンに再リファー、診察の結果、メンタルヘルスに関わるその人を働きやすくさせる要因や、苦手なことの特性などを、医師からの情報提供に関するにはクライアントの同意書が必要。同意書がないばかりにキャリコンにフィードバックできず、連携がうまくいかないケースがあった。
厚労省が発行している職場復帰支援に関する情報提供依頼書のサンプルなどを使って書面を用意していただけるとありがたい。医師とキャリコンが協力しクライアントにあった支援ができるようにしていきたい。
・医師でありキャリアコンサルタントであり小川先生ならではのお話が聞け大変貴重でした。
メンタルヘルスは一筋縄ではいかない部分があり、だからこそ深く考え、信頼を築き、協力することの大切さを学べました。後半ブレイクアウトセッションは4人の部屋でした。少人数だと話もたくさんできいいですね。4~6人くらいがちょうど良さそうだと感じました。
・キャリアに特化した対人支援職としてメンタルヘルスの問題をどのように捉えるのか、事例を交えてとても分かりやすく説明いただき、とても勉強になりました。今後の自分の在り方の参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
・適応障害、発達障害とギフテッド等幅広くご説明頂き大変勉強になりました。実例も挙げて頂き、分かりやすかったです。今後は「人間力」を向上していきたいと思います。
・最初にお話しいただいた『適応障害とキャリアの密接な関係』というものが多くの症例を解説いただくことで、『繋がり』が理解でき、腹落ちしました。
・適応障害はストレスに起因。さらにそのストレスの原因は『キャリア』に関することが多い。
最初に精神科医に相談→仕事以外は問題ない=>適応障害→自己理解不足、仕事理解不足。先生の『結局、この人もキャリアの相談なので、薬を処方しません』というのが印象に残っています。
また、ツイッターという処方があるのも驚きですが、『職場復帰支援に関する情報提供依頼書』というものが、重要だということも私に取って今回の最大の学びかもしれません。いずれにしても、キャリアコンサルタントの活躍の場があることもわかり、非常に貴重な時間でした。ありがとうございました。
・とても勉強になりました!内容はもちろんですが、小川先生と参加者の皆さんと相互のやり取りが豊富で、集中できました。またグループでのディスカッションもあり、自分の考えもまとまり、他の方の意見を聞く事で理解も深まりました。
・小川先生の実例をお交えたお話しが非常に興味深く大変勉強になりました。医師もキャリコンも人間力が重要だと感じました。
・とても学びになる時間をありがとうございました!具体的な症例が多く、実務に生かしやすい構成でとても良かったです!
・実際の事例を交え、難しい判断の良かった例、悪かった例など具体的に話してくださっことは、とてもありがたかったです。
当初予定していた40名の枠を大幅に超える60名もの方のご参加をいただきました。
講義では精神科医でありながら、キャリコンの資格も持っている小川先生ならではの視点で、メンタルヘルス対応の基本のクイズや、実例の紹介も交えつつ、示唆に富んだわかりやすいお話を多くいただき、キャリアとメンタルヘルスとの結びつきやキャリコンに求められる姿勢、医師とキャリコンとの連携について多くの学びがある有意義な時間となりました。
また講義修了後の交流会では、限られた時間の中、相互連携に向けた医師とキャリコン双方の普及・啓発の必要性や、発達障がいの方への認識などについて活発に意見が交わされ、参加者同士の交流はもちろん、講義の学びをさらに深める場にもなったようです。
小川先生、並びにご参加の皆様、ご多忙な中ご参加いただき本当にありがとうございました。
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