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2020.02.17
近年、メンタルヘルスの不調で、通常の生活に支障をきたす人は、後を絶ちません。 キャリアコンサルタントへの相談も、体調不安からの相談が多く寄せられています。 メンタルヘルス不調への対策としては、、まずは「セルフケア」が大切と言われています。
しかし、それだけでなく、職場でも変化に気づく「ラインケア」の体制をどのように築くかも重要です。「ラインケア」について説明すると共に、職場において、どのような仕組みを整えておくことが必要なのか解説します。
ラインケアとは、職場における、メンタルヘルスの不調を防止・ケアするために行う取り組みです。部長や課長といった管理監督者が、部下にあたる労働者に対して行います。同じ現場の部下のメンタルヘルスについて、部下と接する機会の多い上司が取り組むことで、不調が現れた際の様子の変化をいち早く察知することが可能です。
実施する内容は、職場環境の改善や、労働者の相談対応などがあります。職場がラインケアの体制を整えておく事は、労働者のメンタルヘルスの不調の予防にとどまらず、職場全体の環境改善にもつながります。
ラインケアにおいて、部下のメンタルヘルスの不調に気づくためには、予兆を把握することが重要になります。メンタルヘルスに不調が生じた場合、生活習慣に影響が出る可能性は高いです。そのため、部下に対して日頃から関心を持ち、日常的な行動の変化を見逃さないよう、注意をしておく必要があります。中には、不調が生じているにもかかわらず、本人が気づいていない場合もあるため、まずは周囲が気付くことが大切です。
予兆把握のポイントは、「勤怠に関する事」「仕事に関する事」「行動に関する事」の3つに分けられます。
勤怠に関する事は、メンタルヘルスの不調が、最も分かりやすく出るポイントです。
遅刻や早退・欠勤が増えていないか。
また、残業や休日出勤が増えていないかをチェックしておきましょう。
無断欠勤をするようになるのも、不調が生じているサインになります。
メンタルヘルスの不調があると、仕事における効率が悪くなったり、レスポンスが遅くなることがあります。
報告・連絡・相談をはじめ、職場での会話が減少する傾向が見られた際は、要注意です。
反対に、多弁になる人もいます。
普段の状態と比較して、仕事の速さや報告等の頻度に違いはないか、しっかり観察することが必要です。
表情や動作に活気がなくなったり、ミスが目立つようになります。
ストレスが溜まり、不調として現れるようになると、日常でできていたことができなくなることが多いです。
寝付きが悪くなってしまうことから、頻繁に睡眠不足になったり、服装・髪型が乱れるという人は少なくありません。
タバコ・アルコールの消費量が増えたり、食欲がなくなる、もしくは、過食になるといった変化も現れやすいです。
言動においては、不自然な言動や弱音を口にするようになります。
しかし、中には反対に作用するケースも。
いつも以上に活発になったり、全く弱音を吐かず、誰にも相談をしなくなる場合もあります。
大切なのは、「普段と違う様子ではないか」という点です。
些細な変化にも気づけるよう、普段から継続して、積極的に部下と関わることが必要になってきます。
ラインケアを適切に行うためには、管理監督者である上司が、予兆把握のポイントを知っているだけでは、十分とは言えません。職場全体で、ラインケアを行う体制を整えておく必要があります。
ラインケアについて周知することに加え、その後の対応についての体制を整えておかなければ、不調の再発や拡散が起こる可能性があるからです。
職場で整えておくべきラインケアの体制は、「ラインケアについての研修」「職場環境の改善」「労働者の相談対応」「職場復帰の支援」になります。
会社は、管理監督者を対象に、早期発見のための予兆把握のポイントや、対応方法についての研修を行う必要があります。
職場でラインケアを行う意義や、管理監督者としての役割についての情報提供。
具体的な部下からの相談対応の仕方と、産業医との連携方法、職場復帰の支援方法まで、詳しく研修を行わなければいけません。
また、同じ現場で働く上司にしか把握できない可能性のある、職場環境の評価・改善の方法も、共有しておく必要があります。
職場環境の改善とは、職場環境におけるストレス要因を特定し、対策をする事です。
仕事の要求レベルや仕事量が多いにもかかわらず、周囲の支援・仕事の自由度が低い場合、多くの人はストレスを感じてしまいます。
ストレス要因は、一般的にストレスを生じやすいとされる人間関係や、責任や権限の仕組みといった組織形態だけではありません。
作業環境や作業方法といった、目に見える要素も、ストレスの要因となります。
温度や湿度・騒音・作業姿勢・感覚器官を含む身体的負荷など。
ストレスの要因が環境にあった場合、同一環境にいる全ての労働者が、次々に不調を起こす可能性があります。
具体的に改善できる部分は早急に気付き、対策に取り組まなくてはいけません。
相談対応を行うには、まずは労働者が安心して相談できる環境を作ることが重要です。
管理監督者が、部下である労働者から相談を受けた際、どのような点に注意して相談対応をすれば良いのか、対応時のポイントを共有しておく必要があります。
例えば、「相談を聴く時は“ながら”をしない」「解決を急がず、まずは受け止める」「相談者のペースを大切にし、話す気持ちになるまで待つ」などです。
中には、管理監督者のみでは、対応しきれない場合もあります。
その際は、産業医や外部の専門機関と、連携することが必要です。
職場がラインケアの体制として、円滑な連携システムを整えておくことで、適切に対処できる事はもちろん、管理監督者が問題を抱え込んでしまうリスクを削減できます。
ただし、個人情報の取り扱いには十分に配慮して、原則は本人の同意があったうえで行うようにしましょう。
メンタルヘルスの不調により、休暇を取ったり、休職する人も中には出てきます。
そのため、職場に復帰した際の、支援体制を整えておくことも重要です。
職場復帰直後の社員は、「メンタルヘルスの不調が再発しないか」「周りにどう思われているか」「以前のように仕事がこなせるか」など、ざまざまな不安を抱えています。
職場復帰する労働者の不安軽減と、不調の再発防止のために、復帰後の管理監督者による観察と支援のほか、職場の受け入れ態勢を整えておかなければいけません。
場合によっては、労働時間の調整や人事調整などを行う必要性が出てくることも。
復帰支援の情報共有と、支援方法について、管理監督者を始め、関係各所との連携が取れる体制を築いておくと良いでしょう。
ラインケアは、労働者のメンタルヘルスにおける不調を早期に対応するために重要です。
さまざまな対応を行い、職場環境の改善に努める事は、メンタルヘルス不調の予防にもなります。
メンタルヘルスに関する相談は、本人からは、なかなか言い出せないことも多くあります。
そのため、管理監督者は、些細な変化にも気付けるよう、日常的に部下とコミュニケーションをとることを心掛ける必要があります。
また、職場としては、ストレスの要因となる職場環境の改善や、ラインケアが十分に行える体制を積極的に築いていくことが重要です。
キャリアコンサルタントなど、キャリアに関わる仕事に携わる方にとっても、このメンタルヘルスの知識は持ち合わせる必要があります。クライアントが職場でどのような状況にあるのか、またどのようなサポートを職場で受けるべきなのか、今一度学んでおきましょう。
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