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2019.10.18
「働く方々の一人ひとりがかけがえのない存在であり、それぞれの事業場において、日々の仕事が安全で健康的なものとなるよう、不断の努力が必要です。」と、厚生労働省作成の第13次労働災害防止計画で述べられています。
経営者のみならず人事に関わる方ならば、この文面は心に染み入るものがあると思います。労働力人口の減少がさらに進んでいく今後において、企業経営の資源である「ひと」の重要性が増してきていることは紛れもない事実です。
今回はその中でも、人事担当者が対応に苦慮するメンタルヘルス不調者への対応について、休職から職場復帰までの一連の流れと職場復帰に向けての外せないポイントについて見ていきましょう。
メンタルヘルスの不調と聞くと、うつ病などといった言葉を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、それだけではありません。主な症状には以下のようなものがあります。
よく起こる症状(心の病気の種類)
『落ち込みや不安』を主な症状とするもの | ・うつ病 ・不安障害 ・心的外傷後ストレス障害 |
『行動上の問題』を主な症状とするもの | ・双極性障害 ・アルコール依存症 ・発達障害 |
『思い込みや幻覚』を主な症状とするもの | ・統合失調症 |
メンタルヘルス不調には、心の病気から仕事によるストレスのための悩みや体調不良まで幅広く含まれており、特に、心の病気は職場で正確に症状を判断することが難しいため、変化にどう気づくか、その改善に向けて、どう支援をしていくかを考えていくことが大切です。
また、このことは特別なことではなく、どの規模の企業でも起こりえる状況です。
次の資料をご覧ください。事業所の規模に関わらず、メンタルの不調による休職者は出ています。その対応は事業運営リスクとして必須のものとなっています。
産業構造や価値観の変化の中で、将来や仕事に対して不安を感じる場面の増加などにより、企業にとって、メンタルヘルス対策を講じることは、リスクマネジメントであると同時に、従業員一人ひとりのやる気を引き出し、組織の活性化を図る方策にもなるのです。
では、いったん休職に入った方が、職場復帰をするためには、どのようなステップで対応していけばよいのでしょうか。基本的な流れをおさえましょう。
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の中で、「職場復帰支援の流れ」として次の5つのステップを紹介しています。
・社員から主治医による診断書の提出
・人事労務管理スタッフ等から必要な事務手続き(休職制度の活用等)や職場復帰支援などの説明
・休職期間中の経済的な保障や相談先の紹介など、安心して療養に専念できるため
の必要な情報の提供
・社員から職場復帰の意思表示
・主治医による職場復帰可能の診断書の提出
・必要に応じて産業医の意見を確認
・職場復帰の可否についての必要な情報の収集(主治医や産業医、社員本人、家族など)
・職場復帰支援プランの作成(復帰日、就業上の配慮、人事労務管理上の対応、フォローアップなど)
・社員の状態の最終確認
・就業上の配慮等に関する意見書の作成(産業医)
・会社による最終的な職場復帰の決定
・疾患の再発や新しい問題の発生等の有無の確認
・勤務状況や業務遂行能力の評価
・職場復帰支援プランの実施状況の確認、評価、見直し
・職場環境等の改善
・管理監督者や同僚等の配慮
主に、この5つのステップで、体と心を徐々に適応させ、職場への完全復帰を後押ししていきます。
メンタルヘルス不調によって休職している社員が円滑に職場復帰するためには、休職から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことがとても大切です。
社内のルールや手続きが整備されていないと、メンタルヘルス不調者がさらに不安を感じてしまい、思わぬ労務トラブルに発展してしまうということもあります。会社の就業規則等においてしっかりと規定しておかねばなりません。
また、どんな手続きが必要か、復職後はどうなるのか、経済的な支援はどうなっているかなどを、丁寧に伝えることでメンタルヘルス不調者へ安心を与えることができます。
実際の職場復帰にあたっては、「職場復帰支援プラン」を各方面と連携をしながら決めていく必要があります。
主な項目は以下の通りです。
(1)職場復帰日
(2)管理監督者による就業上の配慮
業務サポートの内容や方法、業務内容や業務料の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など
(3)人事労務管理上の対応等
配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性
(4)産業医等による医学的見地からみた意見
安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見
(5)フォローアップ
管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し
(6)その他
労働者が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用
※「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」厚生労働省
この職場復帰支援プランの作成と実施にあたっては、多くの関係者が各々の立場で関わり、職場復帰を支援していくものとなります。
特に、メンタルヘルス不調者への対応で最も難しいことは、「症状への理解」です。
何が出来て、何が出来ないのか、どういったときに気分が良くて、どういったときに気分が悪くなるのかなど、ほんの些細なことでも影響を受ける可能性は十分にあります。
そのため、各関係者がそれぞれの役割を担っていくこと、また、円滑なコミュニケーションのもと、様々なケースを想定したうえで十分にかつ慎重な配慮が求められてきます。
そのためにも「情報の共有をすること」が大切です。関係者同士の「連携」です。
経営者や人事担当者あるいは産業医だけでなく、主治医、メンタルヘルス不調者本人やその家族とも連携することで、再発などのリスクを減らしていくことが可能となります。
復職者がきちんと働き続けられる職場環境をつくることは、復職者だけでなく他の従業員にとっても「働く意欲があれば、病気になってもこの会社なら働き続けることができる」と示すことであり、従業員の安心感や意欲向上につながるのです。
メンタルによる休職者に対するケアの仕方を知ると同時に、企業にとっては「予兆把握」もとても大切です。
メンタル不調は日常的な行動や日常の変化を見逃さないようにしましょう。本人には自覚がない場合もあるため、まずは周囲が気づくことが大事です。結果、職場環境の悪化を防ぐためにもつながります。
・遅刻、早退、欠勤が増える
・残業、休日出勤が不釣り合いに増える
・休みの連絡がない(無断欠勤がある)
・仕事の能率が悪くなる
・業務の結果がなかなか出てこない
・報告や相談、職場での会話がなくなる(または多弁になる)
・表情に活気がなく、動作にも元気がない(または頑張りすぎる)
・不自然な言動が目立つ
・ミスや事故が目立つ
・服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする
・弱音、泣き言を口に出すようになる
メンタル不調は、どの企業でも起こりえるリスクです。日頃より「人事・労務担当の体制づくり」「産業医との連携」「外部機関の活用」など、連携を取りながら解決できる体制を整えておきましょう。
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