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人生100年時代の『社会人基礎力』とは?~いつまでも必要とされ続ける人材になるために~

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2019.07.15

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最近、ニュースなど様々な場面で「人生100年時代」というフレーズを耳にします。 健康寿命が伸びる中で、いま私たちの生活は大きな変換点にあります。キャリアの面で言えば、例えば新卒一括採用からの画一的なキャリア形成が徐々に崩れつつあることなどは、ご存じの通りかと思います。

今回は、そんな変化の激しい時代の中で「いつまでも必要とされるつづける人材」として不可欠な “社会人基礎力” についてお伝えしていきます。

“社会人基礎力”って何?

“社会人基礎力”は2006年に経済産業省が提唱した、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力です。
人材開発やキャリア教育に携わる方であればご存知の方も多いと思いますが、改めて内容を簡単に振り返っておきましょう。

“社会人基礎力”は「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力に分類された12の能力要素で構成されています。

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「人生100年時代の社会人基礎力について」(経済産業省HP)

この考えが作られた当時は、ニート状態にある若者の増加などが社会問題化しており、若者がスムーズに就業し社会で活躍するための能力開発が必要となっていました。そんな背景の中で、経済産業省が産学の有識者による研究会を立ち上げて、主に大学生を中心とした若者が育むべき能力としてまとめられたのが“社会人基礎力”です。

なお、この考え方については「最低限これがないと困る条件としてまとめられた」ということは押さえておきたいところです。
社会で活躍するために求められる能力には様々なものがありますが、職種や役割、環境や時代によって変化する「あった方が良い条件(=十分条件)」と、多くの職場や地域で共通して必要とされる「不可欠な条件(=必要条件)」に区別して議論され、必要条件に限定してまとめられたものなのです。

“社会人基礎力”がアップデートされた

そんな“社会人基礎力”が、IoT・ビックデータ・AIなどといった技術革新(いわゆる「第四次産業⾰命」)や「人生100年時代」のもとで、2018年に見直されました。その名も“人生100年時代の社会人基礎力”です。

この“人生100年時代の社会人基礎力”は「これまで以上に⻑くなる個⼈の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる⼒」と定義されています。

これまでは大学教育、就職・採用、新入社員研修など、若年層を中心とした限られた年代を対象としていましたが、新たな社会人基礎力では若者からシニア層まで全ての年代が対象となったことは大きな変更点です。

“人生100年時代の社会人基礎力” とは?

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「人生100年時代の社会人基礎力について」(経済産業省HP)


それでは新しくなった考え方を見ていきましょう。
基本的にこれまでの社会⼈基礎⼒の「3つの能⼒/12の能⼒要素」の内容は変わっていません。

一方で、「3つの視点」として
・何を学ぶか(学び)
・どう学ぶか(統合)
・どう活躍するか(目的)

という考え方が加わりました。自らが能力を発揮するにあたって、この3つの視点(学び、統合、目的)のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置付けられています。

新しい“社会人基礎力”は、どう読み解くのか?

3つの視点が加わった新しい“社会人基礎力”を、「なんだか複雑でわかりにくい…」と感じている方はいないでしょうか?
これまでの“社会人基礎力”が純粋に能力の列挙だったのに比べて、“人生100年時代の社会人基礎力”は「視点」や「振り返り」という能力以外の内容が書かれているので、分かりづらいと感じる方もいるかと思います。

そこで、もう少し詳しく3つの視点について見てみましょう。

視点 定義
学び 学び続けることを学ぶこと
統合 自らの視野を広げて、自己の多様な体験・経験や能力と多様な人々の得意なものを組み合わせて、目的の実現に向けて統合すること
目的 自己実現や社会貢献に向けて行動すること

この3つ視点のバランスを図り続けることで、変化する社会の中で自らの立ち位置が常に相対化され、現在の複雑・不透明・不確実な時代を生き抜くための「キャリア・オーナーシップ」を個々人が見定めることにつながる。

ここから分かることは、3つの視点は「キャリア・オーナーシップ」のために必要なのだということです。
「キャリア・オーナーシップ」とは、個人一人ひとりが「自らのキャリアはどうありたいか、如何に自己実現したいか」を意識し、納得のいくキャリアを築くための行動をとっていくことです。

つまり“人生100年時代の社会人基礎力”とは、「自らのキャリアを自ら考え、実現のために “社会人基礎力”をベースに行動し、自ら自分を変えていける力」と言えるのではないでしょうか。

この背景には、技術革新によって知識やスキルの賞味期限が短期化する中で、一人ひとりがスキルをアップデートしていくことが求められるようになったことがあります。PCやスマートフォンに例えると、時代や状況に応じて自らの「アプリ(=職場や業界などに応じた能力)」をアップデートしていくことと、あらゆる環境で自らの能力を最大限発揮するための「OS(=社会人としての共通能力であるキャリア意識や“社会人基礎力”)」を備える必要性が増しているのです。

いつまでも必要とされる人材となるためには、どうすればいいのか?

これまでの日本の雇用環境の中では、キャリアは企業から与えられた仕事・役職の結果として形作られるもの、という意識を持つビジネスパーソンが多かったように思います。

しかし、今後いつまでも必要とされる人材となっていくためには、キャリアは働く個人が自ら作り上げるべきものだという認識が不可欠です。置かれた制約や条件の下で、自らの働き方を選択し、獲得するスキルの種類やスキルを活かす場面などを意識し続けていく必要があります。また、学び続ける意識も重要です。自らをアップデートし続けるためには、「働く」と「学ぶ」を一体化させていく必要があります。

しかし、これらを急にやれと言われても難しい方もいるかもしれません。そんな場合はキャリアコンサルタントの活用を検討してほしいと思います。過去のキャリアの棚卸しや問題の顕在化、今後の能力開発に対する助言・指導など、きっと力強い存在となるでしょう。

企業に求められるアプローチとは?

最後に企業の視点にも触れておきたいと思います。

従業員がキャリア・オーナーシップを持つことで、人材の流出を懸念する経営者や企業の方もいらっしゃるでしょう。しかし、企業が人材を囲い込み、「内に閉じた人材」さらには「会社に寄りかかった人材」を育成してしまえば、変化の激しい時代において、企業の競争力は保てないでしょう。

むしろキャリア・オーナーシップの醸成や、キャリア開発支援を積極的に行うことが、従業員の要望に応えることになり、エンゲージメントや生産性の向上、イノベーションにつながっていくことになるでしょう。つまり人生100年時代においては、企業と従業員との関係性は、これまでの「リタイアまで雇用し続けて守ること」だけでなく、「自社及び社会で活躍し続けられるように支援すること」へと変化していくべきです。

なお、企業内のキャリア・オーナーシップの醸成についても、「セルフ・キャリアドッグ制度」の導入やキャリアコンサルティングの活用も有効な手段の一つです。外部パートナーも活用しながら、従業員のキャリア開発支援を自社の活力に繋げていただきたいと思います。

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