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2024.12.10
HRラボでは、人事・キャリア支援者のための実践塾「浅井塾」塾長浅井の経験と深い考察をもとに、 実践的な知見をお届けする場としてコラムを定期発信しています。キャリア支援者や企業人事の皆さまが直面する課題に対し、新たな視点や実践的なヒントを提供することを目指しています。
今回のテーマは、「キャリアコンサルティングの限界」です。
外部のコンサルタントと企業内コンサルタントの3つの違い
⚫︎第一の違いは、外部(社外)のキャリアコンサルタントは相談者個人のため“だけ”に面談をしますが、企業内キャリアコンサルタントは個人のためだけのケースと会社の利益のためのケースを使い分けながら面談をしなければならないのが大きな違いです。
⚫︎第一の違いは、外部(社外)のキャリアコンサルタントは相談者個人のため“だけ”に面談をしますが、企業内キャリアコンサルタントは個人のためだけのケースと会社の利益のためのケースを使い分けながら面談をしなければならないのが大きな違いです。
「年もとったし、がんばっても評価してもらえないので仕事はほどほどにします。チームメンバーへの協力は自分の仕事に余裕があったとき以外は関わらないことにしたいんですけど」という相談はベテランとの面談の中では全然珍しいことではありません。
こういうとき外部のキャリアコンサルタントであれば「それもあなたの人生。後悔しないのならそれでいいんじゃないの」という返事で多くは解決するでしょう。
しかし、企業内キャリアコンサルタントの場合、高い給料を払っているベテランにその働き方をされてしまったら会社に損失を与えることになってしまう。少なくともチームへの協力ぐらいは積極的に行うように仕向けなければ、という気持ちも巡るはずです。
相談者個人の利益と会社の利益の狭間で葛藤を繰り返しながら対応していかなければならないのが、企業内キャリアコンサルタントの苦しみです。
⚫︎第二の違いは、相談後の対応です。
社外のキャリアコンサルタントであれば、アドバイスをした結果、相談者の予後が順調にいけば二度と相談に来ることはないでしょうし、うまくいかなかったら次は別のキャリアコンサルタントに相談するはずです。
つまり、その相談者と再度顔を合わせる確率はかなり低いのですが、企業内キャリアコンサルタントの場合は、社内で顔を合わせることが頻繁にあるはずなので、予後が順調でない場合、非常に気まずいことになったり、場合によっては相談者の上司から「余計なことを言ってくれたな!」というクレームが入ったりすることだって考えられます。
そういうことを想定すると、企業内キャリアコンサルタントは、自分がアドバイスしたことに対する責任を感じながら生きていかなければならない苦しみも抱えています。
⚫︎第三の違いは、情報量です。
企業内キャリアコンサルタントは社内の人事賃金制度を人事担当者とほぼ同等レベルに熟知しています。
これだけでも社外のキャリアコンサルタントとの違いは言うまでもありませんが、同じ社内の人間同士ですので、福利厚生や風土、制度と運用、会社の生い立ちや暗黙のルールまで、あらゆる環境や条件を知っている点です。
相談者が「○○の部署に異動したい」と言ったとき、「あの部署は華やかに見えるけど、それだけのことをやっている。つまり、残業がかなり多いということですよ」とか「あの部門長の下にいる人は、パワハラ寸前のオーダーに悩んでいる人がたくさんいるよ。それでもいい?」というようなアドバイスは社外のキャリアコンサルタントにはできないのです。
「退職金がこれだけ出るから、そんなにおカネのことは気にしていないんです」という相談に対しても、「NTTの歴史からすると、だいたい10年に1回ぐらいの頻度で賃金制度が大きく見直されてきているよね。そうすると、あなたが定年になることには、退職金も○割ぐらいは減っていると思っておくべきだよ」というアドバイスも社外のキャリアコンサルタントにはできません。
⚫︎面談でネガティブだった人がポジティブになった。モチベーションが10倍に膨らんで帰っていった。「むちゃくちゃ元気になりました!」という御礼のメールが届いた。キャリアコンサルタント冥利に尽きる瞬間です。しかし、暫くすると元の状態にリバウンドしてしまう人をたくさん見てきました。
相談者本人に問題がある場合は再面談を行うなど解決策があるのですが、相談者がいくらやる気を出したところで、上司との関係性、組織から降りてくるミッション、働き方改革による勤務形態の変更や時間外労働規制など相談者本人にもキャリアコンサルタントにも解決することができない環境要因が立ち塞がったとき、それを前にしてキャリアコンサルティングは無力です。これがキャリアコンサルティングの限界です。
例えば、相談者が成長するためには上司のサポートが絶対不可欠というものもあります。しかし、上司が部下のためを思い、一生懸命サポートしてやりたいと思っても、それが組織にとって何のメリットもない行動であれば、上司の上司がそのサポートを許さないでしょうし、制度がそれを制限してしまうこともあります。副業がその代表例です。キャリアコンサルタントが副業でなら自己実現できるという選択肢を示したところで、会社が副業を認めなければ無意味なものとなってしまうのです。
キャリアの限界の話をキャリア論の有識者と話をすると、キャリアコンサルタントが会社の制度カイゼンや組織課題に介入できる仕組みを作ったりすることで、その限界も突破できるとおっしゃる先生もいますが、現実にはそれがうまくいくほど甘いものではありません。
それができるのは、キャリアコンサルティングによほどの理解を示す経営トップがいる会社ぐらいでしょう。
キャリアコンサルティングは、その成果が数字で見えない世界で展開されるものです。営利を目的とした経営者がキャリアコンサルタントにそこまでの権限をあたえることにメリットを感じないからです。私はポリシーでやる仕事があってもいいと思っていますが、現実はそうはいきません。NTTコミュニケーションも然りです。
したがって、理論ではなく現実として、キャリアコンサルティングの限界は「突破できないもの」として受けいれていくしかないと思います。
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